■サブカル部インタビュー企画第5弾


「サブカル界を支える人たちに会いに行こう!」サブカル部の“欲”がうずまくインタビュー企画!


第5弾は、

アニメーション制作会社
『エイトビット』
会社ロゴ

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via エイトビット

小説投稿サイト『小説家になろう』にて連載されていた小説『転生したらスライムだった件』(以下:転スラ)のアニメーション制作を手掛けている会社だ。

他にも、空前の登山ブームを生み出した『ヤマノススメ』、comicoの大人気漫画『ミイラの飼い方』など人気作品を華麗にアニメ化してきた。

2020年7月からは『魔法科高校の劣等生 来訪者編』や、10月から放送開始の『転生したらスライムだった件 第2期』にも期待が高まる。(※)



今回のインタビューでは、転スラのアニメーションプロデューサー「小菅秀徳」氏から、作品を介して“アニメーションプロデューサー”とは一体どんな存在なのかを紐解いていく。

さらに!

2020年10月からスタートする第2期に向けて『転生したらスライムだった件』第1期の制作について振り返っていただいた。


TVアニメ『転生したらスライムだった件』
アニメーションプロデューサー

小菅秀徳 氏



(※)新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の感染拡大の影響を受け、放送・配信が延期。現在2020年10月からの放送・配信を予定。

■前半は「転スラらしさ」で丁寧に


編集部
『「転スラ」とても良かったです…!』

小菅秀徳(以下:小菅)
『そう言っていただけるとめちゃめちゃ嬉しいです!』

編集部
『2クール通して贅沢に観させていただきました!序盤の話を丁寧に描かれており、観る側として主人公達に感情移入しやすい順を追った物語が描かれていたなと思ったんです。ある種の安心感を抱きながら観ていました。』

小菅
『実は、前半の展開が丁寧に描かれたのは、「転スラ」の制作が決まった初期の段階で非常に話し合われた部分になります。
当時は展開が早い作品が主流でしたので、「同様のスピード感で」という要望は出ていました。
しかしシリーズ構成の筆安(一幸)さんや菊地(康仁)監督から、視聴者の皆さんが各キャラクターに感情移入ができるよう、小さいエピソードもなるべく触れていき、丁寧に物語を追っていく展開にしていくことが「転スラらしさ」に繋がるのではないかという話を頂きました。
ただ商売的な部分ももちろんあるのと物づくりの現場的な二つの面から何度も話し合いを重ね、最終的に小説原作者の伏瀬先生ともお話をさせて頂いた上で今の形での進行が決まりました。』

編集部
『そういった話し合いのもとがあっての丁寧さだったんですね!』

■現実と異世界の間をどう作るか、グラフィックは「転スラ」の顔


Q. 1話は転生の物語がスタートする重要なプロローグですよね。

小菅
『実は1話がチャレンジで、現場のスタッフ間で色々な話し合いをし、制作していきました。
一概には言えませんが多くの作品にとっての1話は、お話の主軸となるキャラクターや世界観を見せつつ、視聴者を惹きつける内容を入れて魅力的なフィルムに向けて行くのが多いのに対して、冒頭の現実世界のパートがあるものの、主な登場キャラが「ドラゴン」と「スライム」しかおらず、しかも洞窟内で暗いシーンが多く
ただでさえ要素が少ないなか、主人公がスライムになったばかりでまだ目が見えない状況。
かつ死んで異世界に移り変わっていくというシチュエーションをどういう絵で見せていくべきかが一番難しい所でした。』

編集部
『でも見事に表現されていましたね!大賢者さんのところとか。1話目から引き込まれました。』

小菅
『冒頭を監督と悩んでいる時にグラフィックデザイナーの生原(雄次)さんに参加して頂けることになり、演出的なアイディアや沢山のスキルや大賢者のグラフィックを作って頂き、突破口を作って頂ました。生原さんが元々アニメ畑の方ではなかったので、発想やアプローチの仕方が斬新でグラフィックの表現も他作品とも差別化されていき、アニメの「転スラ」の作品の大きなテイストの一つを確立して頂ました。』

編集部
『確かにとても印象的な演出でした。ここから転生していく、異世界に行くんだなというのがすぐに分かりましたし、現実世界と異世界との切り替え部分というか。
そのあとのドラゴンとスライムだけの世界をすんなり受け入れられたのは、もしかしてこのグラフィックで脳が切り替わっていたからなのかも…。』

小菅
『それはあるかもしれないですね。他にも見ていて飽きないように、様々なスタッフと協力しながら色々仕込みができたなと思います。』



Q.主人公は“スライム”という無気質な作りのキャラなのに、ちゃんと表情を豊かに描いているのがすごいなと思いました。「?」とか「!」とか。


小菅
『スライムのデザインは、様々な作品で活躍されている岸田隆宏さんがモンスターデザインとして設定を描いてくださいました。
沢山のアイディアを出して頂き、それをもとに作画スタッフが広げてくれて、色々な表現に繋がりました。』



■アニメーションプロデューサーは現場の人間


Q.そもそも小菅さんは「転スラ」のアニメーションプロデューサーには、どのような経緯でなったのですか。

小菅
『㈱バンダイナムコアーツさんから「転スラ」のアニメーション制作のお話を頂き、それを弊社代表の葛西から「やってみないか」と声をかけて頂き、現場を預かってやらせていただきました。』

編集部
『ではスタッフィングというのも小菅さんが?』

小菅
『そうですね。現場スタッフの統括になるので、メインスタッフの構成を決めるのは大きな仕事の1つだと思います。
アニメーション制作会社によってプロデューサーの領域の区分けがだいぶ変わる場合があるので、一概には言いにくいですが大枠はこの様な形かと思います。』



Q.そのアニメーションプロデューサーとは、制作においてどんなポジションにいる人ですか。


小菅
『まず企画の初期段階から関わり、先頭にたって現場のベースを作るポジションではないかと思います。』



Q.先ほど話に出たスタッフィングについて、メインスタッフを構成する際は、どういったことを考慮されるのでしょうか。


小菅
『クリエーターの方々はそれぞれ特徴があるので、できるだけそれを活かせる様に考えております。これが上手く行くかどうか次第で作品を膨らませるかどうかに大きく影響が出てくるのではないかと強く感じます。』

編集部
『ちょっとやそっとの時間では決めるのが難しそうですが…そういった準備はどれくらいの期間を設けて進めていくんですか?』

小菅
『一概には言えなくて、企画からオンエアまでのスケジュール感というのはタイトルごとに違います。
早いタイミングから企画が発足して動き出して時間が取れるものもあれば、いろんな事情があって急に決まるということもあるので、かけられる時間というのは作品によってそれぞれなので。』




Q.「転スラ」で菊地監督を起用したのはどんなお考えからですか。


小菅
『今回に関しては、菊地監督はエイトビット立ち上げ時からご一緒させて頂き、どういうのを得意としているのかなどの特徴からして「転スラは相性が良いのでは」と思いお願いさせて頂きました。
菊地監督は過去にファンタジー作品をやられていて、ノウハウを持っていらっしゃるということもあったので。』

編集部
『ノウハウは重要なポイントになってくるわけですね。』

小菅
『そういう面からも菊地監督にお願いできたのは良かったです。』



Q.アニメーションプロデューサーは、作画のチェックはどこまでされるのですか。


小菅
『これもプロデューサーごとに違うとは思いますが監督やキャラクターデザイナーが意識しているところをできるだけ見て確認する様に心がけてます。』

編集部
『色々な人にそれぞれ任せて、詰められたものが上がってきたらテンション上がりそうですね!』

小菅
『色々と大変なこともありますが多くのスタッフが力を合わせて作品ができあがっていくので面白いと思います。その思いが少しでも観ている方に伝わるといいなと。』



Q.最近は背景など作中のロケーションも注目されるポイントですが、舞台などはどうやって決まっていくのでしょうか。


小菅
『監督から概ねイメージを出してもらうのでそれに合わせてロケハンに行ったり、資料を集め参考をもとに設定化していったり、舞台設定を起こしていくことが多いです。』

編集部
『なるほど。そうして背景が作られていくんですね。「転スラ」のように異世界の場合はどうするんですか…?』

小菅
『原作の文章とか挿絵、あとはコミックがありますので、世界観の情報をできる限り拾って踏襲し、アニメ化に合わせてブラッシュアップさせて頂きました。』

編集部
『描かれていない部分はどう補っているのですか?』

小菅
『そこはアニメオリジナルとして起こすしかないので原作の世界観を踏襲しながら起こしていきます。
コンセプトを決めるのは監督なので、「デザイナーさんと一緒にどういうイメージでいきますか?」という、打ち合わせをして膨らませながら決めていっています。』


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