■サブカル部インタビュー企画第4弾


サブカル部が大好きなアニメを支えている人達へのインタビュー企画!

今回は、

アニメーション制作会社
MAPPA
会社ロゴ

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via MAPPA
へ突撃!


最近記憶に新しいTVアニメ『かつて神だった獣たちへ』、共同制作でTVアニメ『どろろ』やTVアニメ『さらざんまい』を手掛け、2019年の夏アニメを大いに盛り上げた。

現在は、スマートフォン向けソーシャルゲーム『グランブルーファンタジー』をTVアニメ化した期待のセカンドシーズン『GRANBLUE FANTASY The Animation Season2』が10月より絶賛放送中だ。



インタビュー企画第6弾では、【作画=アニメーション制作の肝】として

●動画
●原画

にスポットライトを当ててみた。


原画マン&動画マンと呼ばれる人たちが、普段どんな現場で制作に関わりアニメと向き合っているのか…

ぜひとも赤裸々に話してもらおうと、MAPPAに務める愉快なお二人に話を伺った。


泣いたり怒ったりするキャラクターのお芝居を自分の手で表現できる点に魅力を感じアニメーターとなった池田智志氏
池田智志さん

池田智志さん

via MAPPA
現在は、原画マンや作画監督を務める。



高校時代に観ていた好きなアニメ作品に名前を残したいと思いアニメーターになったという入社3年目の小原優佳氏
小原優佳さん

小原優佳さん

via MAPPA
現在、原画マンになることを目標に動画マンとして日々精進している。



作品の基盤ともなる重要なポジションの作画部。

今回は、真面目な話も交えつつ現場の空気感が伝わる、原画と動画のちょっとおかしな”あれこれ話“を語っていただいた。


■“良い動画”は目に残らない


Q.原画マンと呼ばれる人たちは、どんな作業をされている方々でしょうか。


池田智志(以下:池田)
『ザクっというと、アニメーションにおけるキーフレームを作る人です。
キーフレームというのは、絵コンテを読み解きながら、キャラクターがその場でどういうお芝居をするのかというのを作画用紙に書き込んだものです。
それと原図と言って背景さんへ渡す用に「このカットはこういう背景でお願いします」と大まかに書き込んだものを作ります。これが”レイアウト“と呼ばれる作業ですね。』

編集部
『レイアウト作業も原画の人がやるんですね。』

池田
『そうです。
その後、作画監督さんにお渡しして色々手直しをしていただきます。
「キャラクターはもっとこうした方が良い」とか「このキャラはもうちょっとダイナミックなお芝居にしてほしい」など修正をいただいた後、動画さんにお渡しする用に清書をするんです。』



Q.「絵コンテを読み解く」というのは…

池田
『基本は絵コンテに書かれていることを忠実にやらなきゃいけないんですけど、どうしても絵コンテには書かれていないこともあったりします。
例えば、キャラクターが座って何か喋っているだけの絵コンテだとしても、目パチ(瞬き)をさせたり、喋りながら視線を移動させたりして生きているように見せるんです。自分が担当するシーンを絵コンテよりもっと掘り下げてあげて足りないところをうまく映像として成立するように付け加えたり、時にはアレンジします。』

編集部
『想像力がないと難しそうですね…。』

池田
『一応、事前に演出さんとの打ち合わせはありますよ!このシーンはこういう風にしてほしいとか、作品自体の雰囲気とかを説明していただくんですけど、僕もそうでしたが新人のうちだと、コンテに書かれていることを一生懸命やるので精一杯でアレンジや掘り下げるというところまで辿りつかないですね…。
間をどう埋めていけばいいのか分からないので、そこは難しいところではありますけどすごく楽しいです。原画マンの個性が出るところでもあるので。
絵を描く前に、考える工程ですごく時間を使います。』

編集部
『その監督や演出家との打ち合わせの場では、ご自身の意見やアイディアは伝えるのでしょうか。』

池田
『なるべく伝えるようにしています。
コンテをいただいた時に「こうしたいな」と思ったことをなるべく相談しています。「コンテではこう書かれていますが、もうちょっとこうしてもいいですか?」って。ただ、演出さんも1本30分の作品をコントロールしないといけないので、他のところで不都合が出てしまうものに関してはもちろん断られたりします。』


Q.動画では、例えば瞬きのシーンだと開いてる状態から閉じようとしている過程の動きを入れていくんですよね。

小原優香(以下:小原)
『そうです。
渡された原画を動かしていくのに中割りを入れていきます。親切な原画だと中割りはとてもスムーズですね。』

編集部
『中割りっていうんですね!その”中割り“というのはどれくらい入れるものなんですか?』

小原
『時には10枚以上とか…(笑)原画には、入れてほしい中割りの枚数の指示が書いてあるんです。』

池田
『すごい枚数だ(笑)』
原画に書き込まれた中割りの枚数を指示したメモ

原画に書き込まれた中割りの枚数を指示したメモ

via MAPPA提供


Q.枚数が多ければ多いほど、動きに何か変化が出るのでしょうか。


池田
『そうですね。例えば、物を投げる動きの時には、投げ始めのポーズと投げ終わった後のポーズがあって、この中間に1枚しか入ってないと3つの動きだけなのですごく早い動きになるんです。
スローモーションでやってほしい時は、十何枚入れるとゆ〜っくりとした動きの見せ方が出来ます。枚数が多ければ多いほど、滑らかな動きになってくるんです。そしてそれは動画さんがすごく丁寧な作業をやってくれた証拠です!』

編集部
『だ、そうです小原さん!どうですか!?滑らかな動きを出すのは難しいですか?』

小原
『ひたすら精神力の闘いです(笑)』

一同
『精神力!(笑)』



Q.原画マンの方が描かれた作画の雰囲気を崩さずに中割りを入れるのは、ゼロから描くのとはまた違う難しさがあるのでは…

小原
『中割りは変な動きが入らないように、あまり目立たないように気を付けています。』

編集部
『良い意味で目立たないように、ですか?』

小原
『そうですね。』

池田
『僕が指導担当の方に教えていただいたのが、“良い動画は目に残らないこと”。自分のやったカットを観て「あ、これで終わっちゃった」って思うくらいがちょうど良いんだと言われました。』

編集部
『そうなんですか!?むしろ記憶に残った方が良いのかと思っていました。』

池田
『動画の仕事に関しては、違和感もなくて、自然すぎてスッと過ぎ去るのがベストなんです。』

Q.その自然さを作り出すのに、上がってきた原画にはどれくらい手を加えますか。

小原
『こっそりと…(笑)わざと入れるのではなく、“整える”という意味でトレース時にこっそり入れます。
中割りだと、座っているキャラが立ち上がるという原画が来た時は、指定された中割りをただ入れるだけじゃなくて「実際に立つ時ってこういう動きをするよな」っていう小さな動作を入れてみたり。細かいですがリアル感が出てくるので、指示はなくても入れた方が良いだろうなと判断して自分で入れてみたりします。』



Q.話を聞いていると、原画マンと動画マンの連携がとても大事そうですね。

池田
『直接会話でのやりとりはそんなに無いのですが、原画に関しては動画さんにいかに分かりやすく作業してもらえるかがミソだと思うので、紙の上でどう表現するか、絵だけでなく文字情報も入れなきゃいけないし小さくて分かりにくいところは横に大きめに書いて詳細を書き込んだりします。
動画さんは、原画の意図を紙から読み解かないといけないから大変かも…。』

小原
『そうですね…人によってですが、綺麗で丁寧な原画ほど意図が伝わってきやすいので作業がとても楽です。』


Q.ちなみに動画マンとしては、どういう丁寧さがほしいですか。

小原
『例えば振り向くシーンがあったとしたら、振り向く前の原画と振り向いた後の原画しかないととても苦労します。「横向きの原画が欲しい!」ってなりますね(笑)』

編集部
『無いときは自分で横顔を描き足すと。』

小原
『頑張って描き足します(笑)』

編集部
『大変…(笑)
自分で描き足すとその分時間が必要になってきますよね…でも納品日は決まっていて…』

小原
『スケジュールとの闘いも頑張ってます…(笑)』


■良い作画を殺してはいけない

Q.視聴者としては、作画の質=アニメ作品としてのイメージがあります。

池田
『この業界のプロ意識は凄まじいです!この業界に入る前から第一線でご活躍されていた方々と一緒に仕事をさせていただいた時、直接仕事の姿勢を見させていただきました。絵にかけるプライドや責任感の妥協ラインが高すぎて、本当に驚かされました。』

編集部
『例えばどんなところでしょうか?』

池田
『単に綺麗な作画であれば良いという事だけではなく、物語の本質を見せる為に作画がどう頑張らなければいけないか、というのを教えていただきました。視聴者には作品に没入してもらうことが大事なので、作画が乱れるというのはその没入感を無くすノイズにしかならないんです。作画が悪ければ悪いほど視聴者が作品から離れていく原因になるので、いかにそうならないようにするかが重要なんだということを知りました。』

小原
『動画では清書された原画を最初にトレースするのですが、「この素晴らしい原画たちからどう線を拾うか」というのは常に意識しているところです。良い作画ほど、これを殺してはいけないという気持ちで常に向き合ってます。
まだまだ頑張らないといけないところがたくさんありますね…。』


Q.そういった心意気がある中で、ネットでは時々「作画崩壊」が話題になりますが、作り手側としてどんな心境なのでしょうか?

池田
『僕の主観ではありますが、作画崩壊しないように死に物狂いでやってはいるけどどうしても起きてしまうものという気はしています。
工程を飛ばしてしまった時に比較的起こりやすいのですが、スケジュール的に修正出来ないカットが出てくるとやはりショックですね。
クオリティーは高いまま保っていきたいと思っていても、この映像をそのレベルに自分が持っていけなかったという悔しさがあって、たとえネットで騒がれなくても、誰も気付いていなくても「もっとこうすれば良かった」というのが常にあります。多分、アニメーターやっている方はみなさん思っている事だとは思います。
自分が携わっていない作品でも実際に目の当たりにすると、なんとも言えない気持ちになりますし、この業界にいる以上決して他人事ではないなと。』 

編集部
『常にそういった葛藤が…』

小原
『後半の話数になっていくとスケジュールくれ〜ってなりますよね…。』

池田
『あと1日!あと1日だけ…!せめてあと12時間あれば!っていうのが(笑)』

Q.早さを求められるけど丁寧な出来も求められている中で、丁寧さとスピード感を敢えて天秤にかけるならどちらが重めですか。

池田
『僕は常に制作さんからケツを叩かれている身なので…良く言えば”丁寧さがある“タイプ(笑)
僕の場合は前から「仕事の上がりは綺麗だけど、速度が圧倒的に遅いからもっと早く描けるようになりなさい」と言われ続けてきていたので。最近作監をやって痛感したのは、1日に出来る自分の作業量というのはそのまま作品のクオリティーに直結しているということ。出来る量が増えないかぎり、絵は良くならないというのを肌で感じて、速度を出していかなければいけないなと。「丁寧さと速さはうまくバランスを取る」って言葉にすると簡単ですけど…。
100点満点のものを3つ出すより、80点のものを20個30個出す方がトータルの点数が高くなるし、絵描きとしてのプライドはもちろんありますが作品を良くしていく為に必要な妥協をして、誰よりも生産性を高めていくことも大事だなと思いました。』

編集部
『丁寧さも速さもどっちも大事ですから慣れていかないとそこのバランスをとっていくのは難しそうですね…動画の方ではいかがですか?』

小原
『動画作業的には丁寧さは絶対だと思っています。でもやっぱりスピードも必要とされるので。私の場合は、個人的な目標としてですけど、1枚でも多く枚数を毎月更新していけるように頑張っています。』


Q.原画マンや動画マンの方々は、普段からどんな技術勉強をされているのですか。

池田
『もちろん絵の練習もしますが、僕に関しては今はどちらかというと「画面作り」の方を勉強しています。画面の中にキャラクターが1人で話しているシーンとか、立ち位置をちょっと右にするだけで美しく見えたりするので。』

編集部
『確かにアニメってかっこいいアングルとかが多くて、エモいな〜って思うこと頻繁にあります!
ああいう画面の配置はどうやって学ぶのでしょう…?』

池田
『僕の場合は、実写の映画をよく参考にしていますよ!実写は、実際にカメラで撮っているものなので嘘がつけないじゃないですか。特に良い映画だと画面の配置が綺麗だったりするのでそういうところから学んでいきます。』

編集部
『同じアニメーションを参考にするのではなく、敢えて実写なのはどうしてですか?』

池田
『実写は空間が成立しているんですよ。「この角度からだとこういう背景はこうやって見えるのか!」とか「これくらいキャラが近づくと後ろの背景はこれくらいボヤけるのか!」とかすごい勉強になるんです。しかも視聴者に向けて、何気ない説得力を持たせられるというのもありますね。』

小原
『なるほど、勉強になります…!
私は動画1年目の時は、人体を描けるようになろうと思って練習していました。今は3年目になって原画マンになることを目標にレイアウトの模写を始めているのですが、まず背景が描けないという壁に当たっています(笑)
最近原画の方々とフロアが近くなったこともあって色々見て学んでいこうと思います。』

編集部
『いいですね…!原画マンに向けて、池田さんから技術を盗んじゃいましょ!(笑)』


■顎クイをさせられる現場…

制作現場の様子

制作現場の様子

via MAPPA
Q.制作する時、お二人はどんな時が一番ウキウキしますか。

池田
『人がよく登場する人間味のある作品とか、キャッキャウフフというか日常のお芝居が描けたりするのは楽しいです。人らしさを描くのは難しいんですけど………なんて言ったら先輩に生意気だと言われちゃいそうです(笑)
アクションも画面映えして魅力的ですけどね。』

小原
『アクションは観る分には好きです(笑)
キャラデザが自分好みの作品はすごく楽しいです。好きなキャラの動きはちょっと贔屓しちゃったりしますね。』

編集部
『推しには時間掛けちゃうんですか?(笑)』

小原
『…ちょっとだけ(笑)
振り向きの中の顔をちゃんとイケメンにしたり、そういうのはあります(笑)』

一同
『(笑)』

編集部
『池田さんもそういう事ありますか?』

池田
『ありますあります!
「BANANA FISH」で長いスパン、男性キャラばかりずーっと描いてて、女性キャラも描きたかったんです。
ブランカのホテルのメイドとのやりとりのシーンを僕がやっていたんですけど、コンテもらった瞬間に女性が写っているから「僕やりたいです!」って(笑) キャラ設定に”綺麗な女性でブランカを誘惑している人“という指示があったので「よしッ!!」って意気込んで自分好みのメイドに全神経を注ぎ込みました(笑)』

小原
『そうだったんですね、観返さなきゃ(笑)』

編集部
『あのメイドさんに池田さんの熱量が注ぎ込まれていたなんて(笑)』


Q.ところで、キャラに動きを乗せるという話が何度かありましたが、実際は筋肉とか骨とか人間の身体の動きを理解していないと出来ない芸当なのでは…

小原
『そうですね。なので動きが分からない時は、隣の人に同じ動きをしてもらうんです。「この動きをしてみてほしい」と頼んで、それをスマホで動画を撮って参考にします。』

編集部
『裏でそんなことしてるんですか!(笑)もしかして原画マンも…?』

池田
『原画も同じことしますね(笑)
お芝居が分からない時とか難しいアングルだった時とかは、「ちょっとこういう姿勢してみて」「もうちょっと手上げて」と頼んで写真撮ってそれを見ながら描いたりとか。
自分がやらされることもあります。』

編集部
『それをやっているところを見たいです(笑)』

池田
『やっている方は小っ恥ずかしいやつです(笑)
前に「BANANA FISH(TVアニメ)」をやった時にアッシュの顎クイシーンで、二人の距離感とか腕がどこに引っかかるか分からないからちょっとやってみてくれないかと言われて…顎クイ再現させられました…男性同士だし距離近いし写真撮ってるのは女性の方だし、端から見たら色々おかしな図が出来上がってましたよ!(笑)あれは本当にかなり恥ずかしい!(笑)』

一同
『(笑)』

編集部
『そんな原画マン裏話があったなんて!あとで顎クイシーン観返します!(笑)』


■常に成長し続けられる場所

MAPPA (13902)

via MAPPA
Q.アニメ制作でやりたい事、アニメーターとしての展望を教えてください。

池田
『僕は引き続き原画をやっていきたいです。お芝居が描きたいし構成を練りたい、それが一番出来るポジションが原画かなと思うので。』

編集部
『監督や演出には?』

池田
『すごくわがままなんですが、自分のシーンは自分で完結させてしっかりやりたいと思っています。でももしかするといずれ自分がコントロールしたいものの幅が広がってくると演出やりたくなってくるのかなとは思います。
今はマッサラな紙から自分で描いて起こしていくこと、そこを極める事が第一目標ですね。

そしてまずは数を出さなきゃいけない…(小声)』

小原
『私は、最終目標はキャラデザをやりたいと思っています。キャラデザになってキャラを魅力的に描きたいです。
今はまず原画マンになって、キャラクターを動かしてみたいなと思っています…けどまだ何も出来ていなくて。動画しかやったことがないのでステップを踏んでいきたいです。』

編集部
『キャラデザいいですね!』

小原
『「BANANA FISH」の林明美さんのキャラデザは、線が少ないのにカッコ良くて、ああやってキャラを描けることに憧れますね。

(あのキャラデザに)似せるのは難しいですか?』

池田
『難しい!林さんのキャラデザは、理論とかじゃないところにある…見えない何かがある…。似せつつお芝居させつつ描くのは難しいですが、それも楽しいですよ。』

小原
『素敵なキャラ達を自分が動かせるのは楽しいですね。私は(奥村)英二を動かしたくて仕方なかった…!』

一同
『(笑)』


Q.最後に、自分にとってアニメとはどんな存在ですか。

池田
『ずっと成長し続けられるもの。際限無く先がある感じがすごく楽しいですし飽きない。生涯かけて、やりがいもって出来るワクワクした存在です。』

小原
『命を吹き込みたいと思う存在です。
キャラクターが生き生きしている作品が好きなので、自分が関わった作品も誰かにそう思ってもらえたらと思います。』

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