■『鬼滅の刃』とは


まずは“どんな作品”なのか、初心に戻って基礎の部分を。

「鬼滅の刃」がここまで注目を浴びることになったきっかけは、2019年4月から9月まで、2クール(全26話)に渡って放送されたTVアニメ。
この放送を機に、一気に熱を帯びました。
TVアニメ「鬼滅の刃」

TVアニメ「鬼滅の刃」


コミックの売上も、放送前は20万部だったのに対して、放送後は100万部超えにまで跳ね上がったそうです。
20万部も充分すごいですが、たった半年で5倍以上は異例とも言えますね。


その理由は、演出・作画・音楽・声優などなど様々な要素の完成度の高さがあったからですが、その件については追々。

本作の根となるのは、週刊少年ジャンプでの連載です。
2016年2月から掲載がスタートし、今現在も連載中で激動の展開を見せています。

コミックは、2019年12月時点で18巻まで発刊されており、そちらもラストスパートに向けた衝撃展開に片足を突っ込み始めました。



あまりの人気っぷりに、2019年12月頃から書店では全巻揃って手に入れるのが難しいようです…(笑)

個人的には、ウェブ漫画がとてもオススメです。(確実に手に入るし、いつでもどこでも読めるから)
漫画アプリ:コミックシーモア

漫画アプリ:コミックシーモア

via 筆者撮影

さらに言えば、アプリでジャンプを定期購読するのがオススメです。
アプリ:少年ジャンプ+

アプリ:少年ジャンプ+



アプリにはオールカラー版の掲載もあります。
アプリ版ジャンプに掲載されているオールカラー版。

アプリ版ジャンプに掲載されているオールカラー版。

着色担当はJネットワークス。
(142話『蟲柱・胡蝶しのぶ』)
via (C)吾峠呼世晴/集英社

原作者は、吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)先生。
ワニが眼鏡をかけているアイコンのため、ファンの間では、“ワニ”先生と呼ばれています。
原作者:吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)先生

原作者:吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)先生

via (C)吾峠呼世晴/集英社

■大正時代×鬼の世界観


さて、大勢の人が「鬼滅の刃」の沼にハマる要素はたくさんありますが、筆者が最近特に魅力的だと感じたのは、作中の時代設定です。


「鬼滅の刃」の舞台は、日本の大正時代
東京・日本橋(大正11年)▷日本橋通りのメインストリー...

東京・日本橋(大正11年)▷日本橋通りのメインストリート(震災前年)


大正時代といえば、たった15年という短い年号でありながら、社会変革や自然災害や騒動、そして第一次世界大戦が起こった激動の時代とも言われています。

明治の文明開化による急激な生活と文化の変化、大正デモグラシーによる民本主義の発展など、明治から昭和の間で濃密な時代を築き上げた時代です。
大正・昭和時代(1970頃まで)の栄町

大正・昭和時代(1970頃まで)の栄町


「鬼滅の刃」に魅了される要素の1つには、この“大正時代”と“鬼”という掛け合わせにもポイントがあると筆者は思っています。



大正時代の日本人の生活には、海外文化や科学の発展も介入しています。

そんな時代に、“鬼”という不確かな存在を認める人がどれだけいるのでしょうか?

現代の私たちに置き換えると、様々な現象が科学的に解明された現代に、宇宙人や妖精などが存在するわけがないと感じるのと同じ現象が、少なからず起きていたはずです。

鬼がいるよと言われても、「そんな馬鹿なことあるわけないだろ」と信じられなくなった時代なわけです。


“夜に人を喰う鬼”の存在を示唆されることが違和感となる時代だからこそ、「鬼など存在しない」と思いたくなるような文明が輝く世界(大正時代)と「鬼が存在している」という非現実的な事実が合わさって出来た”世界観の不釣り合い“がフィクション性をさらに強くして、物語により魅かれるのではないでしょうか。


現に、作中で活躍する“鬼殺隊”は、政府非公認の鬼討伐組織です。

非公認である理由は、“文明が発展した今の時代に鬼の存在は認め難いものだから”とされていますが、そうした作中設定が、大正時代という枠の中でとても活かされていますよね。


日輪刀を腰に刺して堂々と歩くことが出来ないため、隊服の中に隠そうとする炭治郎たちのやりとりも、明治初年の廃刀令の影響を強く受けているという時代の壁を強く感じる描写でした。
54話『こんばんは煉獄さん』

54話『こんばんは煉獄さん』

via (C)吾峠呼世晴/集英社

また、作中では、善逸の「鬼がどうのこうの言っても却々信じてもらえない」という言葉に炭治郎が「一生懸命頑張っているのに」と言ったことに対して、善逸は「仕方ない」としています。

死ぬかもしれない戦いの中で、周りに認知されないことを16歳の少年が「仕方ない」と割り切るシーン。

些細な1コマのようですが、大正がどんな時代だったのかを知ることで、この潔さに並々ならぬ重圧を感じられずにはいられませんでした。
54話『こんばんは煉獄さん』

54話『こんばんは煉獄さん』

via (C)吾峠呼世晴/集英社

こういった時代背景は、炭治郎や柱たちの命がけの戦いが、人知れず闇夜で繰り広げられてきた事実を一層に引き立てているのではないでしょうか。

命を賭けて戦う鬼殺隊の孤独さと過酷さが感じ取れる要素であると思います。



なぜ、人喰い鬼がいるのにその認知度は低く、人(モブキャラ)は普通に暮らしているのか。

鬼殺隊以外、鬼への対策をとっておらず無防備なのはなぜなのか。

人間の悪敵でもある人喰い鬼を倒す鬼殺隊が、なぜ、政府非公認なのか。



主人公たちにとって不利な設定も、全ては大正時代という骨組みにおいて、実はとてもしっくりくる設定であり納得せざるを得ないほどの説得力の強いポイントとなっていると筆者は思います。


明治から大正への流れや大正時代にどんな出来事があって、この時代の日本人がどういう生活をしていたのかなどを調べてから改めて「鬼滅の刃」を読むと、また違った感覚が生まれ、面白みが増すので時代知識を少しでも付けて読むのがとてもオススメです。

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