■サブカル部インタビュー企画第2弾


本企画の第2弾は…

アニメーション制作会社
Lay-duce(レイ・デュース)

アニメーション制作会社 Lay-duce(レイ・デュース)

アニメーション制作会社 Lay-duce(レイ・デュース)

via レイ・デュース提供


2019年7月から絶賛放送中のTVアニメ

『荒ぶる季節の乙女どもよ。』
『荒ぶる季節の乙女どもよ。』メインビジュアル

『荒ぶる季節の乙女どもよ。』メインビジュアル

via ©岡田麿里・絵本奈央・講談社/荒乙製作委員会

2017年11月に6週連続全6話構成で放送された『いつだって僕らの恋は10センチだった。』、2018年10月には1クールアニメ『RELEASE THE SPICE』などを手がけている制作会社だ。



今回サブカル部のインタビューにお答えいただいたのは、こちらのお三方…!


『荒ぶる季節の乙女どもよ。』監督・演出
塚田拓郎 氏
塚田監督・出演

塚田監督・出演

via 本人提供

『荒ぶる季節の乙女どもよ。』作画監督
佐古宗一郎 氏
佐古宗一郎作監

佐古宗一郎作監

via 本人イラスト提供

OVA『ゆるゆり、』総作画監督
鵠沼亮介 氏
鵠沼亮介総作監

鵠沼亮介総作監

via 本人イラスト提供

なぜこの業界で働くのかアニメーターとしての仕事へのスタンスなど、私達視聴者側には見えない“作り手の世界“をのぞかせてもらった。


読み進める前に、監督・作画監督・総作画監督のそれぞれのポジションを軽く頭にいれておこう。
監督・作画監督・総作画監督のポジションイメージ図

監督・作画監督・総作画監督のポジションイメージ図

via サブカル部編集部

■全ては“アニメが好き”から始まったこと


Q.なぜアニメ制作に携わろうと思ったのですか?
塚田拓郎(以下:塚田)
『アニメが好きだったという事もありましたけど、もともと物作りがやりたいと思っていたんです。なので就職活動は、出版やテレビ映画関連を中心にしていました。その中でボンズ(アニメ制作会社)に受かったのがきっかけです。
大学は一般大学だったので、絵が描けるとか特別なスキルがあったわけでもなく、何かしていたわけでもなかったので、普通の大学生活を送っていました。』
佐古宗一郎(以下:佐古)
『僕は、高校生の時からアニメに限らず絵を描くのが好きだったんです。将来的に絵を描く仕事をしたいと思っていました。
当時「もののけ姫」が公開されていて、その時にアニメーターという職業があるという事を知って、高校卒業後は専門学校へ行きました。
最初はアニメじゃなくても良いと思って漫画も考えましたけど、漫画ってネタも作らないといけないんですよ。僕は話を作るのは出来ないからやっぱりイラストの方かなと思いながら専門学校へ通っていたら、動かすのが楽しいって事に気付いてアニメーターになりました。』
鵠沼亮介(以下:鵠沼)
『実は、最初はアニメとかあまり好きじゃなかったんですけど、中学生の頃に涼宮ハルヒが話題になっていて、ちょっと観てみたら物の見事にハマってしまったんです(笑)
ストーリーも凝っていて色んな映画のパロディーが練り込まれていて、アニメって面白いなすごいなと思いましたね。
その影響で可愛いキャラクターの絵を描いてみたいって思い始めて趣味で書き続けました。
高校の時は、それを仕事にするってあまり考えてなかったので、大学は経営学部へ進学してアニメを観ながら空いてる時間で絵を描いていて、アニメ会社に応募して受かった事を機にアニメの業界に行こうと決めました。』


Q.つまり絵は独学でこの業界に?
鵠沼
『そうですね。あの頃はインターネットがだいぶ発展し始めていたので、芸大やアニメーターを目指す人たちのコミュニティーがあって、接する機会がたくさんあったんです。ネットを介して必要な情報を得られたのが大きかったと思います。』


Q.学生時代に観ていた『ゆるゆり』作品に今度はご自身がOVA『ゆるゆり、』の総作画監督として携わった心境はいかがですか?
鵠沼
『プレッシャーがすごかったです…。
今回の「ゆるゆり、」に限った話ではなくファンの皆さんは目が厳しいですから。
動画マンの頃から自分が担当するところはちゃんとやりたいと、今でもそこはブレずに取り組んできてますけど、とにかくプレッシャーがすごいです。』


Q.今のポジションにくるまで、どんな経緯がありましたか?
塚田
『僕は絵が描けないので制作としてこの業界に入り、制作として5年ほど働かせてもらいました。その中でプロデューサーを目指すか、演出を目指すか悩みましたが、やってみてダメだったら制作に戻ろうと思って演出をやってみました。幸い、人や作品との巡り合わせは恵まれていたと思います。
センスっていうタイプではないのですが、真面目にコツコツと仕事をこなしていたら、ここまで来たという感じです。』
佐古
『僕はひたすら“アニメーターの仕事”をしてきて、1つずつステップを踏ませてもらえる機会があったんです。
でもそれなりの努力はしてきたつもりです。
絵は好きだったけど、すごく描けるというほど才能があったわけではなかったので、毎回壁にぶち当たっていたんですよ。
枚数が上がらないとか動画になっても仕上がりが綺麗じゃないとか、その度にどう乗り越えていくかをひたすら考えてきました。』
鵠沼
『動画マンとして入った会社を1年で退社して、マッドハウス(アニメ制作会社)で第二原画を請け負ったりして一時はフリーランスでやってました。
実はアニメが嫌いになった時期があったんです。アニメーションから離れてイラストだけを 書いていた時期がありましたね。その頃にレイ・デュースからイラストの依頼も受けていました。「うちの会社に来てやろうよ」ってずっと誘ってくれてた子がいて、デジタルの作業にも興味があったので、じゃぁもう一回やってみようかなと思ってここに来て色々やっていくうちに、総作画監督をやらせていただく機会をいただきました。』

■クリエーターとして

レイ・デュース社内

レイ・デュース社内

via レイ・デュース提供

Q.やりがいを感じる瞬間はどんな時でしょうか?
塚田
『視聴者のリアクションですね!昔はハガキが届くまで反応が分からなかったと思いますが、今はSNSを通してリアルタイムで見られますから。たまに調べて視聴者の反応をのぞいちゃいます。
手応えを感じても、最終的に視聴者に刺さらなければ意味が無いので、手応えの結果がダイレクトに知れるのはモチベーションになりますね。』
佐古
『僕の場合は、憧れているアニメーターの方の絵が上がってきた時、原画を直接見ることが出来ることですね。生で触れられる、見る事が出来るというのはこの仕事の特権だと思います。』
鵠沼
『全部言われてしまいました(笑)
塚田さんと佐古さんと同じなのですが、それ以外をあげるなら、フィルムが完成した後に「お疲れ様でしたー!」と言い合う瞬間です。みんなで1つのものを作りあげて完遂した時のあの空気感がすごい好きなんですよ。あと、作業が多い時に届く差し入れ(笑)
「ゆるゆり、」制作時に、作画チームと制作チームで交互に差し入れを贈るちょっとした差し入れブームがあってすごく楽しかったですし、こういうのが起きるのは、やっぱり一緒に制作しているからだなって思います。』


Q.アニメーターだからこそ、意識してしまう事やついやってしまう癖はありますか?
塚田
『作画やってるとありそうですよね。』
佐古
『街中の人たちの姿勢は…見てしまいますね…。「あの姿勢すごくいいな」って思ったら参考にする時もあります。実際の身体つきはそのままだとアニメでは使えないので、アニメならではの表現で “しなやかさ”を出すためにデフォルメ化しますけど。』
鵠沼
『僕はファッションをすごい見ちゃいますね。女性のファッション雑誌もよく見ます。街中でもキャラのイメージに合いそうな格好している人を見つけたら、どこのブランドか調べて参考にして取り入れたりします。』
塚田
『あまりガン見しすぎると怪しまれるから気をつけないと…!』
鵠沼
『さすがにそんなガン見しないですよ!(笑)
チラチラッとだけ見てササッと調べてます!』
筆者
『気をつけてくださいね(笑)
ちなみに推しのキャラと似たような格好をする“イメージコーデ”をやられる方もいるんですよ。リアルを参考にしたものがアニメに投影されて、それをまたリアルのファンが真似をするって構図が出来上がっていたとは…!』
佐古
『そうなんですね。面白いですね。
癖というか人間観察が趣味になっている人は多いかもしれないです。つまりはフェチなんですよね。どこに自分のこだわりを置くか、それによって目の付け所というか、普段から観察してしまう部分は人それぞれです。
アニメーターの中には“ふくらはぎ”の形でキャラの描き分けをする人もいますよ。』
筆者
『すごいフェチですね…(笑)』


■忙しさは“自分次第”の世界

レイ・デュース社内

レイ・デュース社内

via レイ・デュース提供

Q.世間的には「アニメクリエーター=超多忙」というイメージが強いですが、皆さんはこの業界の忙しさについてはどのように捉えていますか?
塚田
『いちクリエーターとしてお話させていただくと、この業界は色々なセクションの“都合”の壁が大きいと思います。それが個人の作業にどう影響するかでその時の忙しさは変わってきます。納期を守る為の手段として残業はあったりしますけど、僕は出来る限り早く帰る努力はしています。その方が効率よく仕事できるので。』
佐古
『技術があって自分のペースで仕事が出来る人もいますから、アニメーターみんながみんな毎日がずっと忙しいわけではないんです。
ただ自分の気分で進められる仕事ではないので、力量を計りながら取り組むことが大事ですね。スキルがある人がやれば1時間で終わる作業もスキルがない人が持ってしまうと5時間とか掛かってしまったり、修正も多く入るとその分後ろの工程作業が遅れてしまうので。
逆に、制作スタンスが確立されすぎている方を(周りのスピードに合わせて)動かすのも難しいです。』
塚田
『作業の進行は、制作進行っていう担当がどうにかやりくりしていくんですけど、そもそも自分の力で確実にどこまでやれるかは、作業者自身がちゃんと把握しておいた方がいいなとは思います。』


■制作作業について

レイ・デュース社内

レイ・デュース社内

via レイ・デュース提供

アニメ制作において、どんな作業や動きがあるのか聞いてみた。
Q.演出は、具体的にはどんなことをするのでしょうか?
塚田
『絵コンテをベースに、芝居、背景、色作り、大きな芝居を作ってそこに小さな芝居をつけていったり、あとはカメラの収まりを決めたり影付けを考えたり。
素敵な絵を描くのは、プロフェッショナルである作画さん達にお任せしています。』


Q.ということは、自分が頭の中に描いているイメージを伝える能力が必要なのでは…
塚田
『そうですね。イメージを伝える方法は人によって様々ですが、僕は絵が描けないので頑張って言葉で伝えています。』


Q.伝えたイメージと少しズレた形で上がってきた場合はどうされるのでしょうか?
塚田
『上がってきたものが自分のイメージと違っていても、それはケースバイケース。
自分が渡していたイメージとは少し違うけど、上がってきたやつの方が面白いってなったら「ありがとうございます!頂戴しますm(_ _)m」って使わせていただく事もあります。イメージは僕個人の想像だけでは限界があると思っているので、固めすぎないようにしています。色んな人の解釈・アイデアを取り入れて、作品をふくらませられたらと思っています。中には、面白いけど今回は作品の趣旨と逸れるからNGってパターンもあります。』

Q.なるほど…。NGとなった案は次回以降の作品で活かされることもありますか?
塚田
『もちろんあります。
その作品に合うと思ったら、面白いと思ったアイディアは入れていきます。』


Q.原作コミックをアニメにするという事は、原作には無い“音”も作り上げていくわけですよね?効果音やBGM、OPやED、それらはどうやって決めていくのでしょうか?
塚田
『「荒ぶる季節の乙女どもよ。」では、音に関しては音響監督を中心にプロが作り出してくれるのでこれもイメージを渡し、共有して決めていきました。』

Q.完成された作品は皆さんで観られるのですか?
塚田
『観ます。音がズレていないか、繋がりはおかしくないか、皆で確認します。』
佐古
『作画もミスしていないかチェックするんです。』


Q.動画になるまでに入念なチェックがあってもミスって出てくるんですね…
佐古・鵠沼
『『出ますね。』』

佐古
『手で持っていたカバンが次のカットで肩がけになっていたり、キャラの立ち位置が変わっていたり。』

塚田
『洋服のワンポイントが消えているなんて事もありますよ。』

Q.そこで発見した作画ミスはその後すぐ修正される、と。
佐古
『時間があれば直せる範囲でギリギリまで直します。でも大きな修正が必要なほどのミスってそうそう無いですけど、細かなミスはやはり出てきますね。』


■『荒乙』制作について


2019年7月から絶賛放送中のTVアニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』についての話も少しだけ聞いてみた。
Q.本作のOP『乙女どもよ。』とED『ユメシンデレラ』は、ギャップを感じるメロディーになっていますよね。OPの方が本作の内容に沿ったメロディーリリックをしていると思いましたが、逆にEDは“ザ・乙女の理想像”を絵に描いたような可愛らしい印象を受けました。
塚田
『主軸はハニワ(HoneyWorks)さんでいくっていうのは決まっていました。OPは岡田さんの脚本に負けない歌詞を、EDは「空気を読まない明るくて可愛いものにしてほしい」と要望を出したんですよ (笑)
ボンズにいた頃に「絶園のテンペスト」っていうアニメに関わったんですけど、そのED曲もシリアスな本編に対して、ちょっと空気が読めない感じの可愛い曲でして。
荒ぶったストーリーがあのフワフワとした可愛い世界観で締められるって逆に面白いんじゃないかと。』


Q.OPとED映像では、本編に合わせて曾根崎さん(作中キャラ)の髪が変化しましたね!
塚田
『そうなんです。本編の途中でイメチェンする彼女の姿は入れたかったのですが、最初から描いちゃうとネタバレになってしまうので。』

筆者
『最近は、話が進むにつれてOPとEDの映像も変化していく演出が多いので、不用意に飛ばせないです。個人的には、そういう些細な変化を発見するのも楽しいので期待を込めて観てます。』


■アニメは人を救う事だってある


Q.皆さんにとってアニメとはどんな存在ですか?
塚田・佐古・鵠沼
『『『仕事!(笑)』』』

鵠沼
『絵を描くのは好きでしたけど、もう趣味ではないですね。自分にとって今は大事な仕事です。だからこそ自分のやるべきところは真剣に手をかけていきたいです。』

塚田
『人が生きていく上では必要ないものですよね、アニメって。でもそれを仕事にし、喜んでくれる人がいて、生活していく事が出来ているのは、ある種、幸福な事と思っています。』

佐古
『塚田さんが言う通りアニメは娯楽ですから、それでご飯が食べられるのは本当に幸せな事だなと。
京都アニメーションさんの一件があってから、アニメがあれだけの人を動かすという事も、過去にアニメに救われた人もいたという事も知ったので、今後はそういう意識をもってより一層取り組まなければいけないものだと思っています。』


Q.アニメーターとしての今後の展望を教えてください。
佐古
『セル画からデジタルへと変化したように、アニメーションは、もっときっと面白い事が出来きると思っています。3Dとかもたくさん使ってみるとか、新しいアニメーション表現を見つけていけたら良いなと思います。
あと、新人育成ですね。やっと本格的に引っ張っていける状態になってきたので、たくさん育てていきたいです。もちろん自分自身もまだまだなので自分の勉強も疎かにせずにやっていきたいですね。』

鵠沼
『忙しそうだからって敬遠されがちなアニメーターの仕事のイメージを、佐古さんがおっしゃっていたように、面白い事や新しい事を取り入れながら変えていきたいと思っています。現場を見ると若いアニメーターがやっぱりまだまだ少ないなと感じているので。』

塚田
『個人的にコレ!というものが今あるわけではないのですが、もっと身近に、気軽に観られるアニメが出来たら良いなと思いますね。いつでもどこでも当たり前のように観ることができる、気軽に観られる作品を作っていけたらと思います。』



■TVアニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』
TVアニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』

TVアニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』

via ©岡田麿里・絵本奈央・講談社/荒乙製作委員会
2019年7月よりMBS/TBS/BS-TBS“アニメイズム”枠ほかにて放送中!

《MBS・TBS》
7月5日より毎週金曜日 深夜2:25〜

《BS-TBS》
7月6日より毎週土曜日 深夜1:30〜

《AT-X》
7月8日より毎週月曜日22:30〜
(リピート放送:毎週水曜日14:30〜、毎週土曜日6:30〜)

※放送日時は予告なく変更の可能性があります

■OVA「ゆるゆり、」Blu-ray一般発売が11月13日に決定!
OVA「ゆるゆり、」

OVA「ゆるゆり、」

via ©2019 なもり/一迅社・七森中ごらく部
タイトル:ゆるゆり、Blu-ray[一般発売版]
 発売日:2019年11月13日
 価  格:8,000円+税

◯封入特典
「ゆるゆり、」さうんどとらっくCD
 OP主題歌「ゆるゆり、てんやわんや☆」
 ED主題歌「リピってチャイム♪」のTVサイズに加えて
 今回新規制作した劇伴3曲を収録。
※こちらは一般発売版特典になります。

◯映像特典
 ノンテロップオープニング映像

◯音声特典
 「七森中☆ごらく部」によるワイワイ!オーディオコメンタリー
※こちらは一般発売版特典になります。

※クラウドファンディング版は、エンディングがフルサイズで、「本編Blu-ray EDクレジット」がラインナップにあるコースをご支援いただきました方のお名前掲載がございます。
一般販売版はエンディングがTVサイズで、スタッフ表記のみとなります。


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