■聖地はいつか消えゆくもの
大好きなアニメの舞台となった土地に足を運び、推しが眺めていた景色を自分も眺められる幸せの境地!!
TVアニメ『らき☆すた』が聖地巡礼の先駆けとなり、新海誠監督作日『君の名は。』で空前のブームへと発展していった。
時間とお金と労力をかけて足を運べば、いつでも彼・彼女らの世界に(心が)飛び込めるのだ。
とか呑気に思っていると、無情な時の流れと現実にブチのめされる(;゙゚’ω゚’):
巡礼や探訪を趣味にしているオタク界隈では、聖地とはズバリこう言われている
『聖地は生モノ』
生モノ。
新鮮な魚や生野菜などといったように、最初のうちはピチピチのシャキシャキ!
ツヤっとした光を放ち旨味成分がギュッと濃縮されているみずみずしさ!
しかし、残念ながら新鮮さとは、時間と共に失われていくのが条理…。
肉は腐り異臭を放ち、やがてカビを生やしゴミと化す。
新海誠監督作品『秒速5センチメートル』
参宮橋駅付近で撮影した聖地
via サブカル部編集部撮影
街や建物もそれと一緒なのだ。
10年前にやっていたアニメの聖地が、今も残っているという保証はどこにもない。
つい最近アニメの聖地となった場所でさえ、「来月から取り壊し!新しいマンション建ちます!」なんて当たり前。
作中で登場した駄菓子屋さんが、OA終了時には閉店して永遠にシャッターが閉ざされる。
聖地はずっと半永久的にそこにあるわけではなく、時代の変化・政治的な影響・老朽化など、さまざまな理由から消え去っていく。
そういう意味では、 “在りし日の風景”を残しておく手段の1つとして、アニメーションは使われているのかもしれない。
今回は、もう2度とカット合わせの回収が不可能となった聖地をいくつかピックアップしよう。
■渋谷駅歩道橋
2020年開催のオリンピックにむけて、大きく土地開拓を進めているのが渋谷駅。
この大々的な改修工事によって渋谷駅周辺の聖地はごっそりと失った。
たとえば、映画『君の名は。』のワンシーンで出てくる主人公の瀧が通っていた歩道橋。
新海誠監督作品『君の名は。』
公開の翌年に撮影
via サブカル部編集部撮影
歩道橋自体は存在するものの、背景にあった“あおい書店”などのビルが解体され新しいビルが再建される事になった。
渋谷駅前ビルの解体作業
2019年3月頃に撮影
via サブカル部編集部撮影
■ファーストキッチン新宿南口店
JR新宿駅南口を左に出てまっすぐ進んだ交差点の一角にあったファーストキッチン。
改修前のファーストキッチン新宿南口店
2016年冬頃に撮影
via サブカル部編集部撮影
ここは、TVアニメ『デジモンアドベンチャー』30話にて登場した。
TVアニメ『デジモンアドベンチャー』
本編30話より
via ©本郷あきよし・東映アニメーション
シンボルマークでもあった大時計は、今は取り外されてしまった為、この時計盤の隙間から彼らがハンバーガーを頬張る姿を見ることはもう出来ない。
TVアニメ『デジモンアドベンチャー』
2016年冬頃に撮影
via サブカル部編集部撮影
■代々木会館
都内の廃墟といえば、この代々木会館。
つい最近まで中国の書物を扱った中古屋が1店舗だけ営んでいたが、ついに2019年8月から取り壊し作業がスタートした。
解体前の代々木会館
解体開始の3日前に撮影
via サブカル部編集部撮影
40年ほど前に生まれた名作ドラマ『傷だらけの天使』の舞台となった建物である。
しかし、最近はとある作品の重要な場所として描かれたことで、かなりの注目度となり、取り壊し直前にもたくさんの巡礼者が訪れた。
それが映画『天気の子』。
新海誠監督作品『天気の子』
作中の鍵となる場所として登場
予告でも度々登場する屋上は、この代々木会館の屋上をモデルとしている。
■秀峰閣
金沢の湯涌温泉街にある老舗旅館の秀峰閣。
秀峰閣
現役で活躍していた頃の秀峰閣。
2015年秋頃に撮影。
2015年秋頃に撮影。
via サブカル部編集部撮影
“働くアニメ”作品と呼ばれるTVアニメ『花咲くいろは』にて、主人公の友人の家(旅館)として登場する。
TVアニメ『花咲くいろは』聖地カット
秀峰閣をモデルにした旅館。
作中では“ふくや”という名前になっている。
作中では“ふくや”という名前になっている。
長年地元からもオタクからも愛されていたのだが、後継者や従業員確保面での課題を抱え、残念ながら2018年3月17日をもって営業を終了した。
営業終了後の秀峰閣
営業を終了した半年後に撮影。
館内の物を外に運び出すなどしていた。
周辺の草木は伸び放題。
館内の物を外に運び出すなどしていた。
周辺の草木は伸び放題。
via サブカル部編集部撮影
経営権を渡したという事から、今後この秀峰閣が取り壊されるのか、あるいは外観を変えずに旅館として営業していくのか…。
花いろ好きとしては、外観は残しておいてほしいと切に願うばかりである。
■白雲楼ホテル
廃墟となった白雲楼ホテル
現役の頃のような威厳と品格は見る影も無い
同じく『花咲くいろは』に登場する建物、主人公が働く「喜翆荘」のモデルとなったホテルだ。
TVアニメ『花咲くいろは』
オープニングシーンに登場する喜翠荘
via ©花いろ旅館組合
湯涌温泉街の高台へのぼったところに、かつて湯涌街を見下ろすように鎮座していたらしい。
ちなみに白雲楼ホテルは、アニメの聖地になってから取り壊されたのではなく、『花咲くいろは』が始まる前からすでに解体されていた。
白雲楼ホテル跡地
ホテルの跡地は展望広場に。
via サブカル部編集部撮影
白雲楼ホテルがあった場所は、道中も整備され展望広場へと変わり、東屋が建てられた。
白雲楼ホテル跡地
東屋の屋根の裏
via サブカル部編集部撮影
白雲楼
写真パネル一部
via サブカル部編集部撮影
この東屋には、かつての白雲楼ホテルのパネルが飾られている。
■ホテルモントレ神戸
個人的に、消失した聖地の中でも一番惜しいと思うのがこのホテルモントレ神戸。
ホテルモントレ神戸の中庭
異国情緒あふれる中庭は、聖地云々関係なく宿泊客に人気だった。
via サブカル部編集部撮影
ホテルモントレ神戸のチャペル
チャペルでの結婚式も頻繁に行われていた。
人気チャペル。
人気チャペル。
via サブカル部編集部撮影
その中庭と地下チャペルである。
ここは、『Fate/stay night』という原作ゲーム・TVアニメ・劇場場全てに登場していた場所。
『Fate/stay night』
ゲーム・TVアニメ・劇場版の聖地
決戦の場としても登場している為、Fateクラスタにとっては大事な聖地だったのだ。
解体されたモントレ神戸は2020年の4月に新しくグランドオープンとなる。
中庭や地下チャペルが残っている事を期待したい…。
■ラジオ会館
“オタクの聖地”と呼ばれるのは、秋葉原。
秋葉原電気街
オタクの聖地
via サブカル部編集部撮影
ここを舞台にした作品『STEINS;GATE』(ゲーム・TVアニメ・劇場版)は、秋葉原にはびこるオタク達が一番巡りやすい聖地作品だ。
作中の鍵となる場所の1つが、ラジオ会館。
旧ラジオ会館
建て替え前のラジオ会館
via gigazine.net
こちらも残念ながら老朽化により2011年8月14日に閉鎖。
その後改修工事が行われ、すっかり綺麗に生まれ変わった。
建て替え後のラジオ会館
見違える明るさに大変身
via www.c-labo.jp
内装もガラッと変わってしまったため、今では珍しいX(エックス)階段もなくなってしまった。
旧ラジオ会館が壊される前、『STEINS;GATE』企画による小粋な計らいでシュタゲオタクを喜ばせた。
本作は、タイムマシンがこのラジオ会館の屋上に墜落することから物語が大きく動き始める。
まさにその墜落シーンを再現したパフォーマンスが行われたのだ。
タイムマシーンが墜落したラジオ会館
期間限定の展示
via サブカル部編集部撮影
3日間だけこの状態でラジオ会館に展示され、オタクがこぞってカメラを向けていた。
筆者もその中の1人。